債務整理

奨学金を自己破産で無くすために必要な知識

奨学金の返済に苦しむ方へ|選択肢としての自己破産

奨学金は、あくまでも借金です。利息は少なく、返済期間が長いため一回あたりの返済負担は少ないとはいえ、返済しなければならないことに変わりはありません。
しかも、しばしば、親など身近な人が連帯保証人となっています。

ここでは奨学金の返済に行き詰ってしまった方が、自己破産する場合について、奨学金を自己破産で無くすメリット・奨学金で自己破産するときの注意点・奨学金を自己破産でなくすための手続の流れ、などを分かりやすく説明します。

1.奨学金を自己破産で無くすメリット

自己破産は、返済しきれなくなった借金を、裁判所を利用して、原則として全額免除してもらえる債務整理手続です。奨学金も、自己破産で免除してもらえます。

自己破産と聞くと、なんだか怖い。どうしてもそう思ってしまうかもしれません。
そのため、自己破産よりも、利息をカットして分割回数を増やすよう交渉する「任意整理」や、裁判所に借金の一部だけの分割払いを認めてもらう「個人再生」を選ぼうとする方がいらっしゃいます。

しかし、自己破産には他の債務整理手続きにはないメリットがあります。

(1) 奨学金などの支払いを原則としてすべて無くせる

自己破産をすれば、原則として一切の借金を返済する必要が無くなります

他の債務整理ではこうはいきません。任意整理も個人再生も返済額は減りますが、なくなりはしません。
特に、任意整理は、利息をカットし分割回数を増やそうにも、奨学金は元から利息が低く支払回数が多いですから、ほとんど意味がありません。

(2) 収入が問題にならない

自己破産では、借金がチャラになるのですから、手続さえ済ませてしまえば収入は問題になりません。

一方、任意整理や個人再生は手続のあとも借金返済が必要です。

個人再生が問題となるのはここです。個人再生では、借金の一部を分割払いできるだろうと裁判所が認め、かつ、実際に計画通りに支払活きる必要があります。
収入がなければ門前払いですし、あっても不十分なら手続に失敗し、借金を減らせないかもしれません。

借金を完全になくせる。自己破産の唯一無比の効果が、収入の問題も解決するのです。

(3) 債権者の反対で手続が失敗することがない

債権者が反対しようが、自己破産手続は進みます。債務者の財産があれば債権者に配当されるためです。

任意整理は「任意」、つまり債権者の同意次第です。しかも、奨学金の債権者は、たいてい同意してくれません。

個人再生は少し複雑ですが、簡単に言ってしまえば、「債権者の多数決で手続が失敗するリスクがある。そのリスクを避けようとすると、さほど返済負担が減らなくなる」という仕組みになっています。
多数決では人数だけでなく借金の金額も問題になります。

奨学金は数百万円にもなる高額の借金です。奨学金の債権者が反対すると、手続が失敗しかねません。

2.奨学金で自己破産するときの注意点

さて、自己破産にはリスクやデメリットもあることは事実です。

考えられる主な注意点をできる限りピックアップしました。法律相談で質問するときの参考にしてください。

(1) 残る奨学金を保証人が支払わなければならない

保証会社がついているときは別として、ほとんどの場合は、奨学金を借りるときに親に「連帯保証人」になってもらっていると思います。
奨学金を借りているあなたが自己破産をすると、連帯保証人は残額全てを一括で請求されてしまいます。

保証人の責任もなくなるとつい考えてしまいがちですが、実は全く逆です。事前に連帯保証人と対策を練る必要があります。

(2) 免責不許可事由がある

免責不許可事由」と呼ばれる不適切な事情があると、借金が免除されないリスクが生じます。

もっとも、ほとんどの場合、裁判所は他の事情を踏まえて借金をなくしてくれます。この「裁量免責」という制度があるので、あまり心配する必要はありません。

ただし、配当されるはずの財産を隠す、裁判所にウソをつく、そんな悪質な場合には、本当に借金がなくならないこともあります。

手続の中では正直にすべてを話し、誠実な態度をとってください。

(3) 債権者を特別扱いできない

裁判所を利用する自己破産手続では、損をしてしまう債権者をせめて公平に扱わなければいけません。この「債権者平等の原則」違反は免責不許可事由の常連です。

特に、奨学金の返済が行き詰ったために、親族や友人、勤務先から借金をしている方は、要注意です。

たとえ、身近な人であってもお金を借りていれば、奨学金の債権者やサラ金などと同じ債権者です。えこひいきは許されません。
債権者として裁判所に申告しないことは免責不許可事由になります。

弁護士への相談後はもちろん、その直前に身近な人にだけできるだけ返済してしまうこともNGで、「偏頗弁済」となってしまいます。

(4) 手続中は資格制限がある

自己破産手続中は、他人のお金を取り扱う資格や職業で働くことができなくなります。

たとえば、警備員や保険・金融関連の資格などです。制限されてしまう職業の方は、職場に相談をして、休職か一時的な配置転換をしてもらいましょう。

(5) 高価な財産が処分される

裁判所により、一定以上の価値を持つ財産が債権者に配当されます。
とはいえ、奨学金の返済にお困りの方は、まだ若いため、マイホームなどが処分されないかといった心配をすることは少ないでしょう。

ただし、価値にかかわらず、担保となっているものは、裁判所ではなく債権者が処分してしまいます。自動車ローンの残る自動車は手放すことになるでしょう。

このとき、車検証の名義次第で難しい問題が生じますので、弁護士に必ず自動車ローンがあることを伝え、車検証や契約書をお見せください。

(6) 借金をしている銀行の口座が使えなくなる

奨学金返済などのために、銀行カードローンを利用していた場合、その銀行の口座からお金を引き落とせなくなります。

銀行によっては、入金もできなくなります。いわゆる「銀行口座の凍結」です。

借金をしていない銀行口座を利用するなど、弁護士の指示を受けてください。

(7) ブラックリストに掲載される

債務整理をすると、ブラックリストに載ってしまうことは避けられません。自己破産なら最長10年間ほど、ローンを組むこともクレジットカードを作ることもできません。

逆に言えば、長くても10年でまたローンを組めるようになります。

3.奨学金による自己破産手続のポイント

最後に、奨学金を自己破産で無くそうとするときのポイントを説明します。

(1) 弁護士に法律相談

弁護士に奨学金を含む借金全てと家計の状況、手持ちの財産などお金がかかわることをできる限りお話しください。連帯保証人と一緒に法律相談をしてもよいでしょう。

弁護士は債権者に受任通知と呼ばれる書面を送付して取り立てを止めさせます。しかし、裁判で給料を差し押さえることはできるままです。油断せず準備に取り掛かりましょう。

受任通知を債権者が受け取ったときに、ブラックリストの登録や銀行口座の凍結がされます。弁護士に対策を確認してください。

【連帯保証人への悪影響を最小限にするための準備】
受任通知により奨学金を借りた本人から奨学金の返済を受け取れなくなるとわかった債権者は、保証人に対して奨学金残額を一括で支払うよう請求してきます。弁護士が受任通知を送る前に、必ず自己破産することを連帯保証人に連絡し、一括して奨学金残額を支払えるか確認しましょう。
一括払いできないなら、任意整理が出来ないか、債権者と交渉します。奨学金の債権者は、連帯保証人に対しては、比較的分割交渉に応じてくれる傾向があります。
一括払いも任意整理も無理ならば、連帯保証人も自己破産や個人再生を検討しなければなりません。
連帯保証人となっている親は、収入や財産が比較的多いでしょうから、個人再生も有力な選択肢になります。しかし、定年退職したあとの年金収入では、個人再生が難しくなってしまいます。お早めに弁護士にご相談ください。

(2) 自己破産手続の種類が決まる

自己破産には二つの種類の手続があり、手間や費用が異なります。

管財事件
管財事件は、債務者に債権者へ配当できる資産があったり、免責不許可事由がある場合に、その調査や配当手続を行う破産管財人が選任される手続です。破産管財人の報酬予納金20~50万円が申立の前に必要となるなど、費用が掛かるとともに、調査・配当手続に対応する債務者の手間・負担も大きくなります。

同時廃止
資産も免責不許可事由もないため、調査・配当手続を大幅に簡単にした手続が同時廃止です。破産管財人が選任されませんので、費用が格段に下がり、手間もさほどかかりません。

管財事件となるのは、典型的には、資産や免責不許可事由がある場合です。

借金が多いときは、浪費やギャンブルなどの免責不許可事由が疑われるので、管財事件になりがちなのですが、奨学金の場合、借金が高額とはいえ理由が明確です。そのため、負担の軽い同時廃止にしてもらえる可能性はあります。

もっとも、他に破産管財人が必要となる事情、特に免責不許可事由があればもちろん管財事件になります。

お金に関して何をしてよいのか、何が免責不許可事由になってしまうのかは、弁護士によく確認してください。

4.奨学金の返済に苦しむ方は泉総合法律事務所へご相談を

自分の将来を明るくするために借りた奨学金で、自分の首を絞める必要はありません。
「借りた以上は返さないと…」そのお気持ちだけで、あなたは十分立ち直れます。

あとは、目の前にある奨学金を自己破産で無くすだけです。借金そのものを完全に消し去ってしまう債務整理は、自己破産を置いて他にありません。

連帯保証人となってくれた親に申し訳ない、迷惑をかけてしまう。と思うでしょう。
確かに、それは否定できません。しかし、それよりも奨学金の負担をなくし、新たな人生の中で恩返しをしていくべきでしょう。

泉総合法律事務所では、自己破産はもちろん、個人再生や任意整理など、全ての債務整理についての豊富な実績がございます。また、債務整理の相談は何度でも無料です。是非、お気軽にご連絡ください。
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