交通事故の損害賠償|慰謝料などの請求手続の流れ
いきなりの交通事故で怪我をしてしまう可能性は、誰にでもあります。
交通事故は損害賠償請求事件の中でも頻繁に起きる一方、死亡事故などでは被害額が億単位になるケースもあります。
とはいえ、事故の状況や損害の内容は、ある程度分類可能です。
そこで、交通事故では、損害賠償請求制度・手続の流れが整備されています。
ここでは、交通事故の損害賠償制度の手続の流れについてわかりやすく説明しましょう。
このコラムの目次
1.警察との対応
警察が交通事故を確認すると、交通事故があったことを証明する「交通事故証明書」が発行されます。
損害賠償請求の基本的な必要書類ですから、交通事故にあったら必ず警察に通報しましょう。
また、怪我をしていることも警察に記録してもらう必要があります。そうしなければ「人身事故」として取り扱われず、事故内容や現場を記録した「実況見分調書」が作られません。
実況見分調書は、保険会社と裁判までもつれ込んだ時に、過失相殺などの証明に必要になる可能性があります。
警察の現場検証には、できる限り早い時期に立ち会って、記憶がはっきりしているうちに自信をもって証言をしましょう。
警察は加害者や目撃者からも事情聴取しますから、被害者の方が現場検証に立ち会わないと、自分の言い分が記録に残されません。
「だれが」「いつ」「どこで」「なにを」「なぜ」「どのように」について、被害者の方自らの記憶を出来る限り具体的に証言してください。
2.医療機関を受診する
病院に行くことは、怪我の治療だけでなく、証拠を作るためにも大切になります。
精密検査をすぐ受け、事故内容なども含めて丁寧に医師に説明しましょう。
特に注意すべき点は以下の三つです。
(1) 事故後すぐに受診する
どんなに遅くても、事故後1週間以内に病院に行きましょう。
1週間以上経過してから病院で診断を受けても、交通事故以外の原因が疑われてしまい、下手をすれば損害賠償請求自体できなくなるおそれがあります。
(2) 専門の診療科に行く
病院ならどこでも良いというわけではありません。むち打ちなら整形外科、目をぶつけてしまったなら眼科です。
専門の診療科でなければ、信頼できる診断をしてもらえない可能性があるので、注意しましょう。
(3) 診断書を作成してもらう
病院に行っても、怪我をしたことを正式に証明する「診断書」をすぐに作ってもらわなければ意味がありません。
繰り返しますが、交通事故で病院に行く意味は、治療だけでなく証拠作りにもあるからです。特に、事故直後の診断は大きな意味を持ちます。
[参考記事]
痛くないのに病院へ行って良い?不正請求を疑われないために
3.保険会社との対応や連絡
加害者側の任意保険会社からも連絡があるでしょう。
任意保険会社は、当初は治療費を病院に直接支払ってくれる「一括対応」などのサービスをしてくれますが、突然その一括対応を打ち切るなどのトラブルが生じることがあります。
そもそも、保険会社と話すこと自体が大きな負担に感じられる方も多いものです。
そのような場合、弁護士に依頼をして保険会社への対応を任せることができます。
一方で、被害者の方ご自身が加入している保険会社へも連絡を取りましょう。
弁護士費用特約を使うことができれば、費用倒れの心配もありません。ご家族が契約しているものも含め、保険会社などのカスタマーセンターに弁護士費用特約を利用できるか確認しましょう。
4.弁護士への相談
弁護士との法律相談は、できる限り早い方が、依頼を後回しにするにしても、弁護士を活用しやすくなります。
弁護士に依頼するメリットは、(さきほどのとおり、保険会社との対応をしなくて済むようになることもありますが)やはり、保険会社が支払う示談金の相場を引き上げ、賠償金を増額できる可能性が大きいことでしょう。
最低限の保証をする自賠責保険、自社の利益のため払い渋りをする任意保険よりも、裁判所は高額の損害賠償金を認める傾向にあります。
依頼された弁護士を前にした任意保険会社は、交渉段階でも裁判→敗訴判決で高額の支払いを命じられるリスク・裁判のため弁護士に依頼するコストを考えます。交渉段階で決着をつけたほうが得だとなれば、支払う金額を増やすのです。
ちなみに、その裁判所の判断をまとめた損害賠償金の相場は、弁護士基準(裁判基準)と呼ばれています。
もっとも、ここまでの話は証拠が充分そろっていることが前提です。
被害者に有利な証拠が少ない、訴えられても勝てるだろうと考えた保険会社は、そう簡単には増額に応じません。
そこで、法律相談だけでもできる限り早くにしておくのです。弁護士からあなたのケースではどのような内容のどんな証拠を集めるとよいのか、そのためには何をすべきなのか、アドバイスを受けましょう。
証拠は事故直後に重要なものが多く、また、事故直後から治療終了まで継続して問題となるものもあります。ですから、法律相談は早くにするに越したことはないのです。
5.通院
通院中は医師の指示の通りに、面倒でも定期的に病院に行って、医師に症状を丁寧に説明しましょう。
むち打ちなど原因が分かりづらいケースでは、通院期間が空き過ぎるとそれ以降の症状が交通事故とは無関係とされてしまうおそれがあります。
怪我にもよりますが、一か月以内の間隔で通院するようにしてください。
なお、むち打ちの場合、「6か月以上、1週間に2,3回継続して通院」が、後遺障害等級認定の目安の一つとなっています。
[参考記事]
むち打ちの後遺障害の賠償金~金額の相場・条件・手続~
逆に、通院しすぎてもいけません。必要かつ相当な範囲でしか治療費を賠償請求することは認められません。
自賠責保険は任意保険よりも被害者の方にとって有利で便利な制度ですが、金額には上限があります。治療費が膨らむと、治療費以外の損害賠償金(慰謝料など)が支払われなくなるかもしれません。
6.治療終了
後遺症が残らなかった場合、治療が終了すると、保険会社から示談金が提示されます。
一方、治療を尽くしきって、これ以上治療を継続しても元の健康な状態に戻らない、つまり、後遺症が残ってしまった場合には、後遺症の損害賠償金を請求するために後遺障害等級認定手続の申請をするかを考えなければいけません。
これ以上の回復が見込めなくなることを「症状固定」と呼びます。
後遺症については、治療中の損害賠償金とは別の損害賠償金を請求できる可能性がありますが、そのためには、自賠責保険会社に申請して、第三者機関による認定を受ける必要があるのです。
医師から後遺症が残るかもしれないと言われている方は、次の後遺障害等級認定の申請をお読みください
7.後遺障害等級認定の申請
後遺障害等級認定で特に注意が必要なポイントとしては、後遺障害診断書・申請方法の選択が重要になります。
(1) 後遺障害診断書
後遺障害診断書とは、医師が症状固定時の症状についてそれまでの治療経過や検査結果などを総まとめしたもので、認定手続でもっとも重要で必要不可欠な資料です。
しかし、医師は法律や後遺障害等級認定手続に詳しいわけではありませんので、症状の説明の仕方が法律家から見ると勘違いを招きかねないものとなることもあります。また、医師はとても多忙ですから、記載漏れやケアレスミスをすることもよくあります。
後遺障害診断書は、受け取ったその場で内容を確認し、問題があればすぐ修正を依頼しましょう。
しかし、微妙なニュアンスは被害者の方ご本人でもわからないですし、何より医師としては内容的に正しいのですからそう簡単に修正してくれません。
事前に弁護士に依頼して、診断書のポイントについて受けたアドバイスを医師への診断書作成依頼や作成後チェックに活かしましょう。
(2) 申請方法(被害者請求と事前認定)
後遺障害等級認定手続の申請方法には、被害者請求と事前認定という二つの方法があります。
その違いは、(後遺障害診断書以外の)必要書類や証拠を集めて、申請手続きをするのは誰かです。被害者自身であるのが被害者請求で、加害者側の任意保険会社が代わりに行うのが事前認定です。
認定されるか、より高い等級に認定されるか微妙なケースで、お金を支払いたくない保険会社に証拠集めを任せると、認定に不利となるおそれがあります。
後遺症の内容によりますが、基本的には被害者請求にしましょう。
もっとも、被害者請求を利用するときは弁護士への依頼がほぼ不可欠です。どんな証拠をどうやって集めれば認定される可能性が上がるのかについて、弁護士のアドバイスを受けましょう。
8.保険会社との交渉
治療終了、または、後遺障害等級認定手続が終わると、加害者側の任意保険会社は自発的に支払う損害賠償金(示談金)を提示してきます。繰り返しますが、この金額は弁護士に依頼した場合よりも低い金額であることがほとんどです。
この段階に来たら、しっかりと弁護士への依頼を検討しましょう。
相談相手の弁護士は、どれくらい提示額から増額できるかの見通しを立ててくれるでしょう。加害者側の保険会社から提示された示談金の金額、現在ある資料、手に入れられる可能性のある証拠…交通事故の損害賠償請求でポイントとなる事情がほぼそろっているからです。
費用倒れリスクが高いなら、そのまま保険会社の案を飲んだ方がいいということも言ってくれます。
9.まとめ
警察や病院、保険会社との最低限の対応を終えたら、できるだけ早めに弁護士に相談しましょう。
泉総合法律事務所は関東に多くの支店を展開し、交通事故の経験が豊富な弁護士が多数在籍しております。
これまで交通事故でお悩みの皆様をサポートしてまいりました。どうぞお気軽にご相談ください。
皆様のご来訪、お待ちしております。
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