借金を返せないときの対処法|債務不履行とは?
債務不履行という言葉を聞いたことはありますか?債務不履行があると損害賠償請求をされますが、事件や事件の損害賠償とは何が違うのでしょうか?
ここでは、債務不履行の内容と、金銭債務の損害賠償、借金を返せないときの対処法について解説します。
このコラムの目次
1.債務不履行とは?
債務不履行とは、果たさなければならなかった義務の履行ができないこと意味します。
簡単に言えば、何らかの契約をしたときに交わした約束を守らないことです。
例えばインターネットで化粧品を購入したら、販売店は購入者に商品を届ける債務と、金銭を要求できる債権の両方が生じます。
一方、購入者は販売店に対し、化粧品を請求する債権と金銭を支払う債務が生じます。
この債務の部分を履行しないことを、法律で債務不履行と言い、販売店がお金を受け取って商品を発送しない場合や、購入者が商品を受け取って金銭を払わないといったことがあれば、それは債務不履行に該当します。
商品の売買トラブルだけでなく、借金の返済がなされない場合も債務不履行に当たります。
(1) 借金は金銭消費貸借契約
借金は法律用語で「金銭消費賃借契約」と言います。消費賃借契約というのは、借りたものをそのまま返すのではなく、消費したらそれと同等・同量のものを返すという契約です。
借金の契約は、将来的に貸主にお金が返済されることを前提にしています。
契約した後は、借主は貸主に対し金銭消費賃借契約で定められた通りの返済期間、返済額を返済する義務を負います。
もし、借主がその義務を果たせなかったときには債務不履行となります。
2.債務不履行の内容
債務不履行には3つの種類があります。それぞれの内容について見ていきましょう。
(1) 履行遅滞
履行遅滞は弁済期を過ぎても履行しないことで、商品代金の支払いの期限が過ぎてしまった、借金の返済日が過ぎてしまった等のケースが当てはまります。
履行遅滞はただ期限が過ぎるだけでは当てはまりません。以下の要件を全て満たすことが条件です。
- 履行可能である
- 履行期を経過している
- 故意・過失など債務者の責めを帰す理由がある
- 履行しない=違法である
履行遅滞は支払いの遅れだけでなく、配送業者の遅れにより指定日時に商品が届かない、定期便コースで指定の期日にモノが届かない、といった場合も履行遅滞に該当し、契約解除などの措置を取ることが可能です。
(2) 履行不能
履行不能は契約が成立した後に、履行できなくなることです。履行不能は以下の2つの条件があります。
- 契約成立後に履行が不可能になる
- 故意・過失など債務者の責めを帰す理由がある
例えばある商品を購入したものの、店舗が火災に遭い商品が消滅した場合や、ペットを購入したのに店主が顧客に届ける前に死亡させてしまった場合などが該当します。
履行不能は債務者の故意・過失があることが条件なので、地震や津波などが理由のときには該当しません。
(3) 不完全履行
不完全履行は、履行期に債務履行ができたのにも関わらず、完全な状態でなされなかった=不完全な状態で行われた場合です。
例えば、書籍を10冊購入したのに、納品予定日に5冊しか送られてこなかったケースや、新品を買ったのに中古が送られてきたケースなどが該当します。
(4) 金銭債務の不履行は履行遅滞
借金の場合は商品と違って、世の中からお金が消えることはありません。
そのため、天災で全財産がなくなったとしても、何らかの手段でお金は得て生活しているはずなので、履行不能が認められることはありません。
また、借金返済日に半額しか返せないという場合も、不完全履行とはならず履行遅滞の扱いとなります。
3.債権者の対応
債務不履行があったと認められる場合、債権者は「強制履行」「契約解除」「損害賠償請求」のいずれかの請求が可能です。
(1) 強制履行
債務不履行があった場合は、相手に対し「早く支払いをして欲しい」「早く商品を納品して届けて欲しい」ということを請求することが可能です。
借金の督促も強制履行の一種です。強制履行には以下の3つの種類があります。
①直接強制
直接強制は国家の執行機関によって、強制的に債務内容を実現させることで、債務者が自分の意思で履行しないときには、債権者は裁判所に履行請求することが可能です。
債務者が借金滞納をしている場合、債権者が裁判所に訴えて差し押さえをして債権回収をするのは直接強制の代表的な例です。
②代替執行
代替執行は、債務不履行の内容が何らかの行為である場合に、債権者が第三者に代わりに行わせ、その費用を債務者に請求することです。
また、何らかの行為でなかったとしても、債務者の行った結果を除去するために行われることもあります。
例えばゴミ屋敷のゴミの撤去費用を求める場合などがこれに該当します。
③間接強制
間接強制は債務者に心理的な圧迫を行って債務履行を促すことです。
例えば期日までに債務履行をしない場合は、金銭を請求するなどして間接的に履行を促します。
(2) 損害賠償
債務不履行では損害賠償請求をすることも可能です。損害賠償するには履行遅滞の条件にプラスして、以下の条件を満たすことが必要です。
- 損害が発生している
- 履行の遅滞と損害に因果関係がある
例えば、注文した食品が腐っていて食べたら食中毒になった場合などは、上記の損害賠償請求の条件を満たしていることになります。
(3) 契約解除
債務不履行(履行遅滞)があった場合は、契約解除をすることも可能です。
契約解除は最初から契約をなかったことにするもので、契約解除するには履行遅滞条件に加えて、以下の要件を満たす必要があります。
- 催告は相当の期間を定めて行うこと
- 契約解除の意思表示をすること
債務不履行があっても、契約解除は突然行うことはできません。
契約は法的な約束なので、債務不履行があっても一定の条件がそろって初めて解除することが可能となります。
(4) 金銭債務の取り扱いは?
金銭債務の不履行がある場合は、如何なる場合でも損害賠償に問われます。
基本的に損害賠償額は損害の程度に応じて決められますが、金銭債務の場合は法定利率に則って計算されます。
借金の場合は、契約時にそのような取り決めがなくても、損害賠償請求権を持つことが可能です。
また、期日にお金を返してもらえないという事実だけで損害があると認められるので、他の債務と違って損害の程度を証明する必要もありません。
また、先にも触れたように、借金の場合は不可抗力を債務不履行の理由にできないので、大災害が原因で返済ができなかったとしても、損害賠償請求を免れることはできません。
4.不法行為との違い
損害賠償請求をされるケースには不法行為もあります。債務不履行と不法行為はどんな違いがあるのでしょうか。
(1) 不法行為とは?
不法行為とは民法709条で「故意または過失により他人の権利を侵害した者はこれによって生じたる損害を賠償する責任を負う」と規定されています。
不法行為の例は以下の通りです。
- 相手にけがをさせる
- 交通事故で相手を死亡させるなど
- パワハラで部下を休職に追い込んだ
(2) 債務不履行と不法行為の違い
①契約の有無
債務不履行…原則必要
不法行為…契約がある場合、ない場合ともに成立する
②時効
債務不履行…債権成立から10年(企業が債権者の場合は5年)
不法行為…損害と加害を知ってから3年、または不法行為から20年
③立証責任
債務不履行…債権者が立証する必要あり。損害の程度は証明する必要はない
不法行為…被害者が加害者の故意・過失責任を立証する
④不法行為が成立する要件
不法行為が成立するには以下の要件を満たさなければなりません。
- 加害者に責任能力がある
- 故意または過失がある
- 被害者の権利又は法的利益を侵害している
- 損害が発生している
契約関係があるときには、債務不履行と同時に不法行為に該当するケースもあります。
例えば、結婚式当日に花嫁衣裳が届かない場合などは、明らかに新婦に損害を与えているので、債務不履行だけでなく不法行為が成立する可能性は高いでしょう。
ただし、借金の場合、延滞が不法行為となることはまずありません。債務不履行が不法行為とまでなるのはレアケースで、よほど悪質な場合に限られます。
5.借金を返せないときの対処法は?
借金を返せないときは債務不履行の状態です。その場合は、以下の3つの対処法をおすすめします。
(1) 督促の無視はNG
借金を返せないときは、履行遅滞となるので、債権者は督促を行うことができます。督促は強制履行の第一歩で、これを無視していると最終的には強制執行されてしまいます。
借金を返せないときは、督促状をつい無視してしまう人は多いのですが、債権者の心証は悪化するばかりで、より強硬な手段に出る可能性が高くなります。
もし、支払いができないときには、できるだけ早く連絡をして、その後の支払いについて話し合いをすることが大切です。
(2) 裁判所から書類がきたらすぐに専門家に相談
借金返済をしないでいると、債権者から債務不履行で損害賠償請求の訴えをおこされることもあります。
その場合、裁判所から呼び出しがあるので、その書類が届いたらすぐに弁護士に相談をして下さい。
呼び出しを無視し裁判に欠席した場合は、債権者が勝訴してそのまま差し押えさえとなってしまうので、専門家と一緒に対処することが肝心です。
(3) 債務整理
借金返済できないままだと、履行遅滞と判断され強制履行が行われます。
返さないまま逃げ切れることはないので、返せる見込みがない場合は債務整理することをおすすめします。
債務整理は主に任意整理、個人再生、自己破産があり、負債や収入の状況に応じていずれかを選択します。それぞれの特徴は以下の通りです。
①任意整理
借金を減額する制度で、この先の利息をカットして、3~5年かけて残債(元金だけ)を返すのが一般的です。
債権者と話し合いをして和解すればOKで、裁判所にも行かずに済み、家族にも内緒で手続きできるので一番利用者が多い制度です。
②個人再生
借金を大幅に減額できる制度で、認可されれば負債をおよそ1/5まで減らすことが可能です。
100万円以下の借金の場合は減額がないので、比較的額の大きい借金を抱えている人におすすめの制度です。
住宅などの財産を手元に残して手続きできるので、住宅ローンを抱えている人には適しています。
③自己破産
自己破産は借金が全額免責される制度です。自宅や車などの自分名義の財産は没収され、債権者に配当されますが、99万円までの現金と20万円以下の財産、身の回りの品は残すことができます。
自己破産=破滅というイメージを持つ人も多いかもしれませんが、賃貸であれば家をとられることもありません。人によってはあまり失うものもなく借金全額免除となるので、デメリットよりもメリットの方が大きいといえます。
債務整理をする場合は、今の自分の状況に最もふさわしい制度を選ぶことが大切です。
いずれの制度を選んでも以後5~7年は借入ができなくなりますが、借金返済の負担がなくなるor少なくなるのは大きな前進です。
債務整理は経済的な再建をはかる第一歩となるので、返済に行き詰ったらぜひ専門家に相談をしてみて下さい。
6.まとめ
借金を返済できないときは、債権者からの督促や裁判所からの書類は無視せず、トラブルになる前に債務整理することをおすすめします。
泉総合法律事務所は、債務整理の経験が豊富ですので、金銭債務不履行についても適切に対処させて頂きます。相談は無料ですので、お気軽にご相談ください。
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