債務整理

自己破産で提出する書類や資料の内容と必要な理由

自己破産で提出する書類や資料はなぜ必要なのか?

支払えなくなった借金を自己破産によりなくしてもらうためには、様々な必要書類や資料を、申立て先の裁判所に提出しなければなりません。

ここでは、書類や資料の提出が必要な理由・主な必要書類や資料・それぞれの書類が自己破産手続の中で持つ意味・書類に関係する大切な制度や注意点などを、自己破産をお考えの方に向けて分かりやすく説明します。

1.自己破産で様々な書類・資料が必要な理由

自己破産手続は、返済できない借金を、財産を債権者に配当することと引き換えに、裁判所によって借金を免除してもらう債務整理手続です。

家計や借金返済の状況・財産の状態・債権者に大損害を与えてでも裁判所が借金をゼロにしてあげるべき人かどうかなどを判断するために、裁判所は「家計状況」「借金の内容」「手元の財産」などの債務者を取り巻く事情をチェックする必要があります。

具体的には、以下のような事項をチェックします。

(1) 支払不能かどうか

自己破産することができるのは、残る借金を支払いきれない「支払不能」の方だけです。

支払不能と言えるかは、家計や借金、財産のすべての状況を確認する必要があります。

(2) 債権者への配当に関して

債権者に債務者の財産を配当するには、債権者はだれなのか、そもそも、債務者に配当できる財産があるのかを、裁判所が正確に把握しなければいけません。

(3) 自己破産を認めるべきでない、よくない事情はないか

配当されるはずの財産を隠すなど、不誠実すぎる人の借金をなくすわけにはいきません。
借金が免除されないリスクが生じる事情は「免責不許可事由」と呼ばれています

免責不許可事由があるかどうか、裁判所は厳しくチェックします。

(4) 手続の種類を選ぶために

配当する財産があるとき、または、免責不許可事由があるときなどには、裁判所は、「破産管財人」を選任して、手続の監督に当たらせます。

破産管財人が選任される自己破産の手続の種類は「管財事件」と言います。
選任不要なら、比較的簡単な「同時廃止」という手続が選択されます。

家計や財産などに関する書類は、裁判所が、管財事件と同時廃止のいずれで手続をするかの判断にも必要です。

 

自己破産手続を申立てる際に必要となる書類や資料のうち、重要なものを一覧にすると概ね以下の通りです。
もっとも、各裁判所によって提出書類が異なることがあります。

2.申立て関連の書類や本人確認書類

自己破産手続の申立書や債務者の身分を証明する本人確認書類については、弁護士に質問されたことを正確に具体的に話し、手続の見通しを共有することがポイントになります。

  1. 申立書
  2. 陳述書や反省文
  3. 住民票(取得をした日から3ヶ月以内)

(1) 申立書

申立書は弁護士が作成しますが、「破産に至る経緯の説明欄」の内容は、債務者が弁護士に伝える必要があります。

  • ブランドバッグを買い過ぎたなどの「浪費」
  • ギャンブル、ソシャゲのガチャ、FXや株式、ビットコインなどの「射幸行為」

など、免責不許可事由に当たることも、ここで丁寧に説明しなければなりません。

正直に説明することで、免責不許可事由があっても自己破産できるようになります。
裁量免責制度」と言って、免責不許可事由があった場合でも、実務上はほとんどの場合借金をなくしてもらっています。

裁量免責もされず借金がなくならずに手続が失敗してしまうのは、免責不許可事由を説明せずごまかそうとしたなど、反省が見られない場合なのです。

裁判所や破産管財人は、これから説明する様々な書類や資料で怪しい点を追及してきます。ごまかしきることは不可能です。
正直に事情を全て弁護士に話してください。

(2) 陳述書や反省文

裁判所や具体的な免責不許可事由の内容にもよっては、債務者の方自身で破産するまでの経緯やこれからの生活について説明した「陳述書」や、免責不許可事由をしてしまったことについての「反省文」を提出することもあります。

(3) 住民票(取得をした日から3ヶ月以内)

世帯全員、本籍地が記載されたものが必要です。
取得日からの有効期限がありますから、準備が整っていないうちに取得してしまうと、取り直しが必要になり二度手間になってしまいます。

弁護士に依頼してからも、書類集めには何か月も時間がかかることがよくあります。

費用の積み立ても数か月が必要でしょう。弁護士と準備計画を立てたうえで、いつに住民票を取得すべきかを確認してください。

3.家計に関する書類

収入の金額は、借金を支払えないかどうかに大きく関係します。
家計簿では、生活費や借金の返済額、借金の原因となった浪費なども確認されます。

  1. 家計簿
  2. 給与明細や源泉徴収票など、収入や年収を証明する書類

(1) 家計簿

正確には、一般的に家庭で記録されているものを、1ヶ月単位で計算し直し、裁判所の書式に記入する「家計全体の状況」または「家計収支表」と呼ばれるものの提出が求められます。

提出が必要な期間は、たとえば東京地裁では2019年現在「2か月分」です。
裁判所により異なりますし、具体的な事情次第では、手続中の家計簿の提出も要求されます。

支払不能なのか、浪費をしていないか、使途不明な出費がないかなどが確認されます。

(2) 給与明細や源泉徴収票など、収入や年収を証明する書類

給与明細や源泉徴収票などで収入や年収を確認すれば、支払不能かどうかわかります。なお、提出するものは写しでかまいません。
申立ての季節によっては、賞与証明書を提出してボーナスの金額も証明することがあります。

裁判所の運用や具体的な事情によっては、所得証明書、課税証明書や確定申告書の控えなど、その他の収入に関する証明書の提出が必要になるときもあります。

給与明細などでは、収入だけでなく、勤務先などからの借入がないか・その借り入れを給料からの天引きで返済していないか・退職金の積立額はいくらかなど、借金や財産に関するチェックも行われます。

4.借金に関する書類

誰に対していくらの借金があり、総額でいくらなのか。それが分からなければ、手続のしようがありません。

債権者「全員」を正直に申告することもとても大切です。
自己破産は裁判所による手続なのだから、全ての債権者に公平なものでなければならない。「債権者平等の原則」と呼ばれるこのルールが直接かかわってくるからです。

  1. 債権者一覧表
  2. 債権者からの訴状など

(1) 債権者一覧表

債権者一覧表は、誰から・何円の借金をしているのかについて、明らかにするための書類です。

弁護士が作成しますので、必ずすべての債権者を弁護士に教えてください。
借金に関する書類があれば、弁護士に渡して確認をしてもらいましょう。

わざと債権者を申告しないことは、免責不許可事由に当たります。債権者平等の原則に真っ向から反する悪質なものですから、裁量免責されないリスクが非常に高くなります。

人間関係のために全額返済したい、友人や勤務先、親族からの借金についても、弁護士に正直に話すようにしてください。

ついうっかり忘れていた場合でも、申告が漏れた債権者への借金がなくならないおそれがあります。
他人の借金の保証人になっている場合、その借金の債権者も手続の対象になります。忘れやすいので注意してください。

(2) 債権者からの訴状など

債権者からすでに訴えられている場合に必要となります。

5.財産に関する書類

債務者がどれだけの財産を持っているか。つまり、配当できるか。管財事件同時廃止のどちらにするか振り分けるための基準の一つとして重要です。

各地の裁判所で、詳細は異なっていますが、ここでは東京地裁の運用を例にしましょう。

東京地裁では、現金は33万円まで、預貯金や生命保険の解約返戻金、退職金見込額の原則8分の1、自動車等の評価額などがそれぞれ全て20万円以内ならば、同時廃止で手続をすることが許されます。

  1. 預貯金通帳のコピー
  2. 生命保険証書・解約金返戻金計算書
  3. 退職金計算書または退職金がない旨の証明書
  4. 車検証または登録事項証明書、車両の査定資料
  5. 不動産登記簿謄本
  6. 不動産評価書類
  7. ローン残高証明書
  8. 財産目録

(1) 財産目録

財産目録にすべての財産が、その価値も含めて正確に記載されていなければ、財産を隠そうとしたのではないかと疑われかねません。

債権者一覧表と同じように、弁護士に正直に説明し、それぞれの財産の価値の確認作業などに協力してください。

(2) 預貯金通帳の写し

申立てのときに2年分(期間は裁判所により蹴りです)の通帳のコピーを提出します。

預貯金は、裁判所にもよりますが、基本的に現金とは別の財産として扱われます。

預金口座はお金の流れを把握するうえで最も重要な資料です。家計簿と並んで、手続中に追加提出を要求され続ける可能性があります。

生命保険や投資信託などはないか、親族に送金して隠していないか、ギャンブルなどの浪費がないか、過払い金があるのではないかなど、預貯金残高の確認以外にも様々な目的で利用されます。

(3) 生命保険証書・解約金返戻金計算書の写し

積立型の生命保険では、解約により返戻金が生じます。

これは債務者の財産と言えるため、その金額を明らかにする必要があります。

(4) 退職金計算書または退職金がない旨の証明書

退職金は必ずもらえるとは限らないので、原則として現在退職したらもらえる金額の一部が基準額として扱われます。

通常は8分の1ですが、勤続年数や退職予定時期などにより、ゼロにも100%にもなります。

(5) 車検証または登録事項証明書などの写し

自動車を持っているときに必要となります。
不動産と比べると低額なので、査定書が必要だとしても簡単なものでよいでしょう。

購入から一定期間経過していると、評価額がゼロになることもあります。

一方、自動車ローンがあるため債権者に引き上げられるおそれがあるとき、車検証の内容次第では、難しい問題が生じますので、できる限り早くに弁護士にお見せください。

(6) 不動産評価書類

不動産の評価については、様々な方法があり、市場価格基準と固定資産税評価証明書基準では3~4割の差額が生じることもあります。

どのような書類を提出して不動産評価額を明らかにすべきか、裁判所の運用により異なるので、弁護士の助言に従ってください。

(7) ローン残高証明書など

不動産に住宅ローンの抵当権が設定されている場合、抵当権を持つ住宅ローン債権者は、不動産を処分しその代金から優先的に回収できます。
債権者平等の原則の例外となるこの権利は、「別除権」と呼ばれています。

もし、不動産の評価額よりも住宅ローンの方が大きければ、住宅ローン債権者以外の債権者はその処分代金から配当を受けられません。他に配当できる財産がなければ、配当自体ができません。

このようなとき、「オーバーローン上申書」という書類も追加で提出すれば、同時廃止が認められる場合があります。

各地の裁判所で詳細が異なる、難しい制度ですので、弁護士とよくご相談ください。

6.自己破産を検討されている方は泉総合法律事務所へ

自己破産のために提出が必要となる書類や資料は、量も種類も多いうえに、詳細は各地の裁判所で異なっています。

自己破産の準備をスムーズに行い、円滑に手続を進めるには、自己破産手続に精通した弁護士の助言が不可欠です。

泉総合法律事務所では、これまで多数の借金問題を自己破産手続で解決してきた豊富な実績があります。皆様のご相談をお待ちしております。

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