公務員でもバレずに自己破産できる?共済組合から借金をしている場合
自己破産は原則すべての借金が免除 されるため、様々な債務整理手続の中でも特に経済的にメリットが大きくなりやすい手続です。
公務員の方でも、自己破産手続を用いることは可能です。公務員であることのみを理由に、自己破産が出来ないということはありませんし、職場にバレることもありません。
もっとも、共済組合から借金をしている場合は要注意です。
- 職場にバレるリスクが生じる
- 手続の費用や手間などの負担が重くなる可能性がある
など、自己破産のデメリットが大きくなるおそれがあるからです。
それでも、自己破産により借金がなくなることに変わりはありません。
要は、どうやってそのデメリットを抑えるかです。
ここでは、公務員の方が自己破産をする場合のポイントや注意点について説明します。
このコラムの目次
1.自己破産手続の基本
裁判所に申し立てをして、支払いきれない借金を無くすことを認めてもらう債務整理手続、それが自己破産です。
自己破産の手続により借金が無くなることを「免責」と言い、その決定を「免責許可決定」と言います。
(1) 手続の種類
自己破産には、2つの種類の手続があります。
- 管財事件
債務者の財産を管理・回収・配当したり、債務者を免責させるには不適切な事情(いわゆる「免責不許可事由」)を調査したりする「破産管財人」が、裁判所により選任される手続です。 - 同時廃止
債務者に配当すべき財産も免責不許可事由もないときは、破産管財人を選任せず、内容を大きく省略した手続です。
詳しくは最後の方に説明しますが、一般的に、①の管財事件の方が、破産管財人が選任されることもあり、手続の負担が大きくなります。
(2) 自己破産に伴うリスクやデメリット
自己破産に伴うリスクやデメリットは、主に下記のようなものがあります。
①一部の資格を用いて働けなくなる
自己破産の手続中は、他人の財産管理に関わる資格を用いて働けなくなります。
②官報に掲載される
政府の機関紙である官報に、債務者の住所氏名が掲載されます。
③一定の財産が処分されることがある
債務者の生活のため残される財産(自由財産)を除き、債務者の財産が裁判所により処分されて、債権者に配当されます。
④特定の債権者を手続から除外できない
自己破産手続では、全ての債権者を公平に扱うべしとする「債権者平等の原則」があるため、特定の債権者を手続から除外できないなど、様々な問題が生じます。
さて、これらの問題は、公務員の方が自己破産した場合にはどのように現れてくるのでしょうか。
2.公務員でも自己破産自体は可能
公務員であっても、自己破産手続を利用できないということはありません。
(1) 公務員が「資格制限」の対象になることはまずない
自己破産をしても、資格制限により公務員として働くことが出来なくなることはありません。
自己破産手続中に制限されてしまう資格は、基本的に他人の財産を管理することに関するものです。
例えば、弁護士などの士業や警備員、保険外交員などです。
公務員は、公正取引委員などごく限られた地位にある例外を除いては、通常、資格制限の対象となることはありません。
ですから、自己破産手続をすることで働くことが出来なくなり、自己破産が事実上できないも同然になるということはありません。
(2) 自己破産手続の負担を増やしかねない共済組合からの借入
もっとも、自己破産手続自体が出来るとしても、公務員を対象とした社会保険組合である共済組合から借入をしていると、自己破産手続に伴う負担やデメリットが大きくなるおそれがあります。
まずは、借入をしていない場合を簡単に説明したうえ、次に、共済組合からの借入がある場合の問題点を説明します。
3.共済組合からの借入をしていない場合
(1) 官報により自己破産がばれる可能性は低い
一般的に、官報は普通の人や企業は確認していませんので、官報により自己破産が知人や職場にばれるリスクは少ないといえます。
そして、公務員についても、その勤務先である公共機関が官報をチェックしていることはほとんどの場合ありません。
確かに、警備会社や保険会社のように、資格制限の問題がある企業は、官報をチェックしている場合があります。
しかし、そもそも自己破産手続中であっても、公務員として問題なく働けるのですから、公共機関としても官報で公務員の自己破産の有無をチェックする必要性はないのです。
(2) 公務員というだけで管財事件になることはない
自己破産の手続を管財事件でするか同時廃止でするかは、裁判所が決めます。
その振分けの基準は、大まかに言えば債権者に配当できる財産があるか、また、免責不許可事由の有無や程度を調査する必要があるかなどです。
そして、公務員だからと言って、そのような事情が必ずあることにはなりません。
ですので、自己破産を申立てた債務者が公務員であるということだけを理由として、必ず負担が大きくなりがちな管財事件になることはありません。
4.共済組合からの借入をしている場合
公務員は、生活費など限られた用途について、低金利で共済組合から金銭を借り入れることが出来ます。
公務員の福利厚生の一環として、有益な制度ではありますが、他に借金がかさんでしまったために自己破産をする場合には、以下のようなデメリットが生じます。
(1) 職場に自己破産がばれるリスクが高くなる
共済組合から借入をしているときに自己破産手続をすると、職場に自己破産をした事実が発覚する場合がほとんどです。
基本の説明で触れた通り、自己破産手続では、特定の債権者のえこひいきを禁止する「債権者平等の原則」があります。
共済組合は勤務先と同じ組織というわけではありませんが、緊密な関係にあります。
共済組合からの借入の返済は基本的に給料からの天引きでされるので、共済組合から勤務先に、自己破産したことが伝わってしまうでしょう。
なお、自己破産をしたからと言って、公務員は失職しませんし懲戒もされません。
現実問題として、職場の誰かに知られてしまうという不安が生じるということです。
(2) 管財事件となり手続負担が大きくなる
「債権者平等の原則」と「給料からの天引き返済」のタッグは、手続が管財事件となることで負担を増大させるリスクも引き起こします。
ある債権者にだけ返済するとトラブルのもと!
債務者が借金全てを支払えない「履行不能」の状態となったあとに、特定の債権者だけに優先して借金を返済することを、「偏頗弁済」と言います。
偏頗弁済は、債権者平等の原則に反するものです。
偏頗弁済を受けた債権者だけが金銭を手に入れる一方、他の債権者に配当されるはずの債務者の財産が減ってしまうからです。
そのため、債務者が債権者に損害を与えるとわかってわざとした偏頗弁済は、借金が免除されないリスクが生じる免責不許可事由に該当します。
一方、債権者が債務者から強制的に取立したために、債務者に落ち度がない偏頗弁済は、免責不許可事由にはなりません。
しかし、他の債権者へ配当するための財産を回復するため、破産管財人は、偏頗弁済相当額を相手方債権者から回収することになります。
これを「管財人の否認権の行使」と呼びます。
結局、偏頗弁済がある場合には、免責不許可事由の調査や財産回収のために、ほとんどの場合は、破産管財人が選任される管財手続になってしまうのです。
共済組合による給料からの天引きは偏頗弁済となる
共済組合は、自己破産手続が始まるまで、給料からの天引きを止めることはありません。
債務者が支払不能であると認められ、以降の支払が偏頗弁済となるのは、基本的に弁護士が受任通知を送付したときです。
普通の貸金業者は、受任通知を受け取ると法律上取立を禁止されるため、訴訟以外で返済を強制することはほとんどありません。
しかし、共済組合は受任通知を受け取っても天引きを止めることはありません。裁判所から自己破産手続開始を決定したとの通知を受け取ると天引きを停止しますが、それまでの天引きされた給料は、偏頗弁済に当たってしまいます。
この偏頗弁済は、債務者に落ち度があるわけではないので免責不許可事由とはなりません。しかし、破産管財人を選任すれば、否認権の行使により、天引きされた給料を回収することが可能なため、管財事件で自己破産せざるを得なくなります。
管財事件で大きくなる費用や手間の具体的な内容
管財事件で自己破産手続を申立てるには、破産管財人の報酬予納金が20~50万円ほど必要になります。
また、配当手続や免責不許可事由の調査に協力しなければならないため、手間が増えてしまいがちです。
特に、共済組合への偏頗弁済がある場合には、破産管財人が共済組合から天引きされた給料を回収するなどの処理が必要となるため、手間がかかってしまうことになります。
5.自己破産を検討されている公務員の方は弁護士へ
公務員の方でも、自己破産により借金を全額免除してもらうことは、まったく不可能ではありません。
基本的には、公務員ではない方とほとんど同じように手続を行うことが出来ます。もっとも、共済組合からの借入がある場合は、これまで説明したとおり、多少面倒なことになってしまいます。
各地の裁判所や破産管財人、共済組合の担当者次第でもありますので、保証はできませんが、法律の専門家である弁護士に依頼することで、手続をスムーズにすることが出来るでしょう
泉総合法律事務所では、これまで多数の借金問題を自己破産で解決してきた豊富な実績があります。
その中には、公務員の方も多数いらっしゃったため、共済組合への対応についても、適切な対処が可能です。是非、お気軽にご相談ください。
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