非免責債権|自己破産しても免除されない借金に注意!
自己破産手続による債務整理をすると、一般的な消費者金融や奨学金、住宅や車のローン等のいわゆる「借金」を含むお金を支払う義務、つまり「債務」(債権者から見れば「債権」)が全て免除されることが原則です。
しかし、実は、自己破産をしても残ってしまう借金もあるのです。そういう借金を「非免責債権」と言います。
ここでは、自己破産手続を成功させてもなくならない借金を、非免責債権を中心に説明します。
このコラムの目次
1.自己破産の「非免責債権」とは
自己破産手続は、借金全額を支払いきれなくなった債務者が裁判所に申立をして、債権者に対し、最低限生活に必要なもの以外の財産を配当する代わり、借金などの債務を免除してもらう債務整理手続です。
自己破産により債務が免除されることは「免責」、裁判所が免責を決定することは「免責許可決定」と言います。免責許可決定がされれば、自己破産は成功。晴れて借金は無くなります。
ところが、無事、免責許可決定が出ても、例外的に免除されない借金があります。これが「非免責債権」です
非免責債権は法律で定められています。主なものは以下の通りです。
- 税金や社会保険料
- 重大・悪質なケースの損害賠償請求権
- 滞納している養育費や婚姻費用の請求権
- 債務者が裁判所に申告しなかった債権者への借金
他にも、人を雇っているのであれば給料支払義務、罰金刑を受けているならば罰金を支払う義務も非免責債権となります。
さらに、担保権がついている借金、たとえば、マイホームに抵当権が設定されている住宅ローンなども、事実上、免除されないような結果になります。これについては、最後に詳しく説明します。
法律には、「免責不許可事由」という事情がいくつか規定されています。免責不許可事由があると、自己破産を申し立てても免責許可決定がされず借金がなくならないおそれがあります。とはいえ、実際には、ほとんどの場合、裁判所が債務者の事情一切を検討して、免責を認めています(「裁量免責」と言います)。
それに対して、非免責債権は、免責不許可事由がない、または、免責不許可事由があっても裁量免責がされ、免責許可決定により間違いなく免責をしてもらったにもかかわらず、なくならない借金です。
自己破産全体が失敗するかにかかわるのが免責不許可事由、自己破産全体が成功しても、部分的に、借金がなくなるという自己破産の効果が届かないものが非免責債権というわけです。
では、それぞれの非免責債権の詳しい説明に移りましょう。
2.税金や社会保険料
住民税や自動車税等の税金、国民健康保険や年金などの社会保険料は自己破産しても免責されません。
しかも、滞納している税金などを役所が自ら強制的に差し押さえる滞納処分は、自己破産前にされてしまうと、自己破産手続が始まっても止まりません。普通なら、差し押さえをされていても、手続が始まれば止まるにもかかわらずです。
必ず、行政の担当課で税金を分割払いさせてもらうよう交渉する「分納協議」をしてください。自己破産するから分割なら支払えると納得してもらうのです。
また、自己破産中は滞納処分を新しくされることはありませんから、分納協議をすることで滞納処分を先延ばしにする必要もあります。
3.重大・悪質なケースの損害賠償請求権
たとえば、交通事故で相手にケガをさせてしまったことについて、修理費や治療費を請求されることがあります。
法律では、このような請求を「不法行為に基づく損害賠償請求権」と呼んでいます。
不法行為に基づく損害賠償請求権の全てが、非免責債権となるわけではありません。
非免責債権となる不法行為に基づく損害賠償請求権は、内容が悪質だったり、結果が重大だったりするものに限られます。
(1) 故意または重大な過失により、相手の生命又は身体に損害を与えた場合
相手が損害を受けかねないとわかって、または、わずかに注意を払えば損害を回避できたのに大きな不注意をしてしまったせいで、相手の生命・身体に損害を与えた場合です。
逆に言えば、「重大な」過失でないといけませんので、ちょっとした不注意による場合であれば免責されます。
また、損害の内容も生命・身体に限られ、それ以外の財産への損害は含まれません。
ですので、たとえば、交通事故で、ちょっとした不注意で相手をケガさせた場合や、重大な過失があったものの相手に与えた損害は自動車に関するものだけだった場合、その交通事故に関する損害賠償請求権は免責されます。
(2) 悪意で相手に損害を与えた場合
悪意とは、積極的に相手に損害を与えようとする意思の事です。損害内容は生命身体に限られません。窃盗などの犯罪で財産を奪ったときの賠償金を考えてください。
次の養育費などに関連して、離婚の慰謝料もここで説明しましょう。
不倫が原因の場合、悪意とまで言えないため免責されます。
しかし、DVが原因の場合は、悪意がある(故意による身体損害にもなりえます)ものとして、非免責債権となります。
4.養育費や婚姻費用の請求権
養育費や婚姻費用の支払いを滞納していた場合、滞納した養育費と婚姻費用は非免責債権になります。
ちなみに、将来支払う分については、そもそも自己破産の対象外です。
5.債務者が裁判所に申告しなかった債権者への借金
友達への借金だけは返したい。だから、裁判所に隠して、自己破産の対象にしないようにしたい…。
このようなことをしてしまうと、その友人への借金は非免責債権となります。
裁判所に債権者を申告するための債権者の名簿である「債権者一覧表」には、手続の対象となる債権者全員を必ず記載しなければいけません。債権者一覧表の作成は弁護士が行うでしょうが、あなたが弁護士に友人からの借金を隠していれば、問題になります。
しかも、わざと債権者を申告しないことは悪質な免責不許可事由になりますから、申告しなかった債権者への借金以外すべての借金が免責されないおそれもあります。
ちなみに、わざと記載しなかった場合だけではなく、つい申告・記載し忘れた場合であっても免責される事はありません。
たとえば、子どもの奨学金の保証人となっている場合、それまであなたが借金を支払ったことがなくとも、子どもが奨学金の返済ができなくなれば、残額を支払う義務がありますから、保証人としての義務も立派な借金なのです。
忘れがちですが、債権者名簿に記載しなければなりません(なお、うっかりのときは免責不許可事由にはなりません)。
債権者の記載漏れがある債権者一覧表を提出してしまっても、一定期間は、債権者を追加できます。
債権者一覧表は、裁判所が債権者に連絡して、債権者が債務者の自己破産について意見を述べる機会を与えるためのものです。そのため、債権者が意見を述べられる間は、債権者を追加できます。
申立後も、債権者が他にいないかよく確認して、記載漏れを発見したらすぐに弁護士に連絡をしてください。
6.担保のある借金は結果的に免除されない
事実上同じような結果になる場合がある借金が、抵当権など担保権のついている借金です。
担保がついている借金の債権者は、借金が免責されてしまう前に、担保から借金を回収することができるからです。回収されてしまった借金は、結果的には免除されないも同然になります。
このように特別な扱いを受ける担保権付きの借金は、「別除権」と呼ばれています。
- 担保が借金より高い金額なら、担保付借金は免除されないも同然
- 保証人の責任は借金をしている本人が自己破産してもなくならない
なお、担保はモノではなく人も用いられます。「保証人」です。
保証人は、債務者が自己破産すると残る借金の一括払いを要求されてしまいます。
保証人の責任はもともとの借金が自己破産で消えても一緒に亡なくならず、むしろ大きな負担をかけることになるのです。必ず事前に連絡し、弁護士を交えて相談をしてください。
7.自己破産を検討されている方は泉総合法律事務所へ
自己破産手続そのものは、一般に思われているほどハードルは高くありません。免責不許可事由があっても裁量免責があります。
しかし、非免責債権があれば、自己破産自体が成功しても、支払い義務が残ってしまいます。
税金などについては、保育園料や下水道使用料など意外なものが税金に似たようなものとして免責されないことになっています。
また、損害賠償金についても、悪意や重過失の認定は、自己破産手続後に裁判で争うことになってしまうこともあります。
そのため、専門的な知識を持たない方が単独で手続を行うべきではなく、自己破産など債務整理に精通した専門家である弁護士に依頼し、助言を受けることが必要不可欠です。
泉総合法律事務所では、これまで多数の借金問題を自己破産手続で解決してきた豊富な実績があります。
借金の返済に行き詰りつつも、様々な支払負担に悩まされ、自己破産をしてもどれほど負担を減らせるのかご不安の皆様は、是非、お気軽にお問い合わせください
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