社長・代表取締役の責任と法人破産
会社経営に行き詰ったときに最終的に行きつく先は自己破産。法人の倒産手続きには再建型と清算型があり、前者は民事再生などで営業を継続するのに対し、後者は財産を処分して会社を消滅させます。
法人破産の基本は清算型で、手続きとともに会社は消滅します。
しかし、会社が消滅したら、破産の責任は一体だれがどのように負うのでしょうか?
今回は法人破産の内容と役員の責任の有無について詳しく解説します。
このコラムの目次
1.法人破産をしなければならない場合とは
会社経営が苦しくなったとき、役員は破産をすべきか否かを決定しなければなりません。
しかし、破産は従業員にとって生活を根底から揺るがす一大事です。それだけに、軽々に手続きに踏み切ることはできません。
結論は熟慮の末に出すべきですが、以下の状況に陥っている場合は、破産を検討する時期かもしれません。
(1) 支払ができていない
期日を過ぎても事業継続に必要な支払いができず、将来的にも支払える見込みがない場合は、これ以上続けるのは困難です。
(2) 近く資金ショートする
現在支払いができていても、近い将来資金がショートする場合は破産を選択肢に入れる必要があります。
2~3か月先に資金がなくなるという場合、それが分かった段階で弁護士に相談をして下さい。
全く資金がなくなるまで放置していると、破産手続費用にも事欠く状況に陥ります。この先起こりうることについて、余裕を持って早めに対処することが肝心です。
(3) 業績改善の見込みがない
このまま続けていても業績改善の見込みがなく、赤字経営が続く場合、自己破産以外の債務整理をしたとしても手続き後の借金払いはできません。
そのため、再建型の倒産を目指すことは難しく、清算型の破産を選択する以外にありません。
2.法人破産の特徴
法人破産と個人破産はいずれも破産法に基づいて手続きが行われますが、いくつかの点が異なります。
法人破産の特徴は以下の通りです。
(1) 破産により法人が消滅
法人は破産手続きをすると消滅します。債務者がいなくなるので、帰属する主体の消滅とともに借金も消えます。
個人破産の場合、破産手続きをしても本人は存在しているので、借金は消滅する訳ではなく、免責によって返済義務をなくします。
法人の場合は借金が消滅するので免責の必要がないのです。
(2) 免責不可事由がない
法人破産には免責不可事由がありません。
個人破産の場合は免責するにも条件があり、例えばギャンブルや浪費などで借金を作った場合や、財産を正確に申告しない場合などは免責不可事由に該当するので、その場合は免責を受けられない可能性があります。
一方、法人は破産をしても免責の必要がないので、免責不可事由も存在しません。
(3) 全ての財産を処分する必要あり
個人破産の場合は自由財産と言って、99万円までの現金や差押禁止財産などは手元に残すことが可能です。また、自由財産の拡張により、20万円以下の財産も残すことが可能です。
しかし、法人破産の場合は自由財産の制度がないので、全ての財産が没収対象となります。
(4) 滞納の税金も消滅
法人が破産すると法人がなくなるので、滞納している税金も消滅します。
個人の場合は税金については自己破産後も支払い義務があるので、この点も大きな違いです。
3.破産申立までにすべきこと
法人破産をするときは、申立までに以下の手続きをやっておく必要があります。
(1) 雇用関係の整理
会社が破産をすると、従業員は破産管財人によって解雇されます。できれば自己破産前に解雇、退職してもらう方がよいでしょう。
本人の意思による退職でない場合は、解雇予告手当を支払わなければなりませんが、そこから自己破産の情報が債権者に流れる可能性もあるので、雇用関係の整理については慎重に、弁護士と相談の上で進めましょう。
(2) 在庫の処理
会社の在庫品は、基本的に管財人が破産手続開始決定後に換価して債権者に配当します。
ただし、在庫が生鮮品など、長く在庫として置いておけないもの、申立日までに価値がなくなるものについては事前に適正価格で売却し、代金を管財人に渡します。
(3) 未回収の売掛金の取り扱い
未回収の売掛金がある場合、管財人が破産手続開始決定後に回収をします。
破産手続開始決定前に回収できる場合、振込口座の金融機関に債務があると借金と売掛金が相殺される可能性があります。
そのため、売掛金の振込口座を変更すると先方に伝えるか、振込後にすぐに引き出せるように準備しておきましょう。
自己破産をするときは予納金、弁護士費用などのお金が必要です。売掛金も重要な資金となるので、未回収代金がある場合は、その取り扱いについても専門家と相談をしておきましょう。
(4) 賃貸契約の処理
会社で事務所や工場などを賃貸借契約している場合、破産申立までの時間を考慮して契約の解除をします。
ただし、敷金の返金や施設内に資産がある場合には、管財人に処分を依頼することも検討しましょう。
(5) 課税庁への対応
法人は破産によって滞納した税金も消滅しますが、税務署など課税庁は破産申立前に滞納処分により法人の資産の差し押さえをすることが可能です。
特に税務署が売掛金や取引先を把握しているケースは緊急度が高いので、速やかに破産申立をして差し押さえを受けないようにしましょう。
4.法人破産における役員の責任
法人は法律により人格を与えられており、経営者個人とは別の存在です。
仮に破産した場合は法人消滅により債務もなくなるので、通常の破産ならば役員は責任を問われません。
しかし、「あの会社は不渡りを出して社長が破産した」というような話もよく耳にします。
破産法の規定では、法人破産で役員が会社の借金を払う必要はありませんが、場合によっては責任を問われるケースもあります。
(1) 責任を問われる場合
法人破産で役員が責任を問われるのは以下のときです。
①連帯保証人になっている場合
会社が融資を受けるときには、銀行が経営者に連帯保証人になるよう要求することは日常的にあることです。
法人破産と同時に会社が消滅しても、連帯保証人の義務は残ることになります。
経営者やその家族が、会社の倒産と同時に破産するのは、大抵連帯保証人になっているケースで、保証債務の支払いができない場合に、個人として自己破産を選択します。
②悪質な経営をしていた場合
経営者には忠実義務があり、会社の運営にあたっては法律を遵守し、株主の決議を尊重しなければなりません。
もし、経営者がその義務に反し悪質な会社経営を行い、その結果として破産した場合は、経営者の責任が問われることになります。
また、会社法で定められた任務を怠り、会社に損害を与えた場合も責任問題に発展します。
ただし、経営の失敗による破産は損害賠償の対象とはなりません。単に経営判断を誤っただけでは役員の責任が問われることはないので、その点は過剰に心配する必要はないでしょう。
③否認権を行使された場合
破産をするときには、財産を債権者に平等に配当しなければなりません。
そのため、破産申立前に没収されそうな財産隠しをしたり、名義変更したりすることは固く禁じられています。
ありがちなのは、破産直前の会社の経営者が、没収を免れるために法人の財産を役員やその家族の名義に変えるケースで、これは明らかに債権者に不利益を与える行為と言えるでしょう。
否認権はこうした行為によって得られた財産や契約の効力を否定するもので、否認権を行使された場合、役員は財産を法人に返さなければなりません。
④経営者名義の財産が含まれる場合
会社の登記が経営者個人の名前になっている場合や、経営者の財産が事業に使われていた場合、実質的には会社のものとみなされ、破産手続きでは法人の財産とみなされることがあります。
この場合、個人の財産でも法人の財産として処理されるので、結果的に経営者が個人として責任をとる形になってしまいます。
(2) 役員が経営判断で責任を問われる場合とは
役員は基本的に経営の失敗について責任を負う義務はありませんが、悪質な経営をしている場合や、必要な任務を怠った場合はその限りではないというお話をしました。
ルール上問題があると断された場合は、役員は株主や債権者から損害賠償を求められる可能性があります。
しかし、悪質な経営や必要な任務を怠るというのは、具体的にどのような行為なのでしょうか?
①株主に対して責任が発生する場合
株主に対して責任が発生するのは、例えば、無謀な投資を不合理な判断で行ったり、誰が見ても放漫経営と思われるような運営をしている場合、また、社長の暴走を他の役員が放置するといったケースが該当します。
②債権者に対して責任が発生する場合
債権者に対して責任が発生するのは、基本的に連帯保証人になっている場合です。
それ以外では、故意または過失により相手に重大な損害を与えた場合などです。
ただ、債権者に対して損害賠償が発生するのは相当悪質なケースに限られます。
例えば、詐欺的なビジネスを展開したり、会社の財産の私的流用があったりする場合はアウトです。また粉飾決算などを行った場合も債権者に対して責任が発生します。
(3) 破産手続中に会社の重役ができないことはある?
法人破産すると、会社の財産の管理、換価、配当を破産管財人が行うので、取締役はその管理処分権を失うことになります。
会社役員は会社から委任されているので、法人の破産と同時に委任契約も終了します。
しかし、株主総会の招集など、会社組織に関係する部分については、破産により取締役の権限が失われることはありません。
また、会社役員は破産管財人に対し、破産手続に必要な事項の説明義務があり、債権者集会への出席もしなければなりません。
その他、一定期間は裁判所の許可なくして居住地を離れることができません(一時的な外出を除く)。
5.法人破産のお悩みも泉総合法律事務所へ
法人破産の場合、基本的に役員がその責任を問われることはありませんが、会社の債務の連帯保証人になっている場合は、破産により債務を肩代わりしなければなりません。
また、単なる失敗ではなく、悪質な経営や、故意または重大な過失により会社を破産させた場合は、損害賠償を求められることがあります。
もし、会社の経営に行き詰っている場合は、速やかに対処することが肝心です。
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